数学的にどうなのさ?

大学時代にちょっと長く数学を勉強した人の雑記。数学のこと(主に統計)や趣味、メモなどが多くなります

京大教授がABC予想の証明

最近はコロナウイルス関連の暗いニュースが多いので気分も暗くなってしまいます…
特に志村けんさん…よくテレビで笑わさせてもらいました。簡単ではありますがご冥福をお祈りいたします…

ですがそんな中、少しは明るいニュースがありました。
数学の有名な未解決問題、ABC予想の証明した論文が専門誌「PRIMS」に掲載されるようです。これは京都大学の望月教授が証明されたもので、どうやら査読が完了したようです。

それではABC予想がどういったものなのか、少し読み解いてみましょう。
基本的にはwikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/ABC%E4%BA%88%E6%83%B3)をトレースします。

内容に入る前に

まずはいくつかの定義の確認をしておきましょう。

自然数nに対して素因数を考えます。素因数は例えば12に対してだと、
\begin{align}12 = 2^2\cdot3\end{align}
となるので12の素因数は2と3となります。

この素因数に対して素因数の積である根底(radical)が定義されます。記号ではrad(n)と書きます。12の場合は
\begin{align}rad(12)=rad(2^2\cdot3)=6\end{align}
となります。

それでは本題

まずは自然数の組 (a,b,c)に対して、a+b=cである組み合わせを考えます。例えば(2,3,5)です。で、このときにa<bでかつabが互いに素である場合にこの組み合わせをabc-tripleと呼びます。
この定義によると(2,3,5)はabc-tripleとなります。逆に(3,2,5)だと3>2なのでabc-tripleではないですね。また(2,4,6)は2<4ではありますが、2と4が互いに素ではないのでabc-tripleではありません。

それでこの時、ほとんどはc<rad(abc)が成り立ちます。
(2,3,5)の場合、
\begin{align}rad(2\cdot3\cdot5)=30>5\end{align}
となるので矛盾していません。しかし「ほとんどは」ということで満たさないケースがあるということ。その場合は(1,8,9)で、
\begin{align}rad(1\cdot8\cdot9)=6<9\end{align}
で満たしていません。ちなみにrad(abc)>crad(abc)<c両方とも組み合わせは無限通りあるのですが、ABC予想rad(abc)<cに注目したものです。

ABC予想rad(abc)を少しだけ大きくすることでこれを満たす組み合わせを無限から有限にできないかを考えたものです。数学っぽく書くと、
任意の\varepsilon>0に対して
\begin{align}c>rad(abc)^{1+\varepsilon}\end{align}
を満たす自然数の組(a,b,c)は高々有限個しか存在しない。
となります。

ここからいくつか同値な式変形でいくつかありますがここでは割愛。

余談

この査読には8年もかかったそうで…
また望月教授は「宇宙際タイヒミューラー理論」という独自理論を展開されているという。ご本人もどうやら証明の完成までに約20年の時間をかけたそうで。
これは読むのも非常に苦労しそうです…

 

参考